Makoto Kuriya
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DISCOGRAPHY
クリヤ・マコトが久々に放つオリジナル・アルバム。10年にわたる渡米生活で身に付いたアメリカ的感性と、ストリングス/オーケストラ・アレンジなどを通じて近年興味を持ち始めたヨーロピアン・サウンドの融合。クリヤなりの、まだ見ぬラテンヨーロッパのイメージをテーマとしたセルフ・プロデュース作品。
本作はストリングス・アレンジ、きめの細かいドラム・プログラミングなど、クリヤのプロデューサー/アレンジャーとしての能力に焦点をあてた作品であるといえるが、05、07のようなアコースティックなサウンドで演奏に重きを置いた作品もまた秀逸である。
01.Insight
02.The Voyager
03.Je Te Veux
04.Send One Your Love
05.You Must Believe In Spring
06.Don Segundo
07.世界で一番君が好き?
08.イパネマの娘
09.奇跡のスタースクレイパー
10.Ultimate Zone
11.Welcome Home
クリヤ・マコト (ph, rhodes, programm) 納 浩一(b 2,5,6) コモブチキイチロウ(b 1,8) 大友正明(b 10)小畑和彦(g 7,8)弦一徹(vl 7)弦一徹ストリングス(1,2,4,8) Karen(vo 8)
ラテンヨーロッパとは?
ヨーロッパのラテン民族諸国、つまりフランス、イタリア、スペインなどの総称。(アメリカ大陸のラテン民族諸国を意味するラテンアメリカと対になる言葉。)
18で米国留学して以来、これまでアメリカ音楽、特にブラック・ミュージック一辺倒だったクリヤだが、ワルシャワでのオーケストラ・レコーディング、フランスへの留学経験を持つクラシック・アーティスト平野公崇とのコラボレーションなどを通じ、突然ヨーロッパに引き寄せられつつある。最近はミシェル・ルグランの映画音楽などをイメージしてポップスや映像音楽をプロデュースすることも多いという。このアルバムでは、そんなクリヤの最近の動向を集大成。アルバム制作当時クリヤは実際にラテンヨーロッパ諸国へ行ったことは無かったが、まだ見ぬ国々の音楽に対する壮大なオマージュとなった。
その後プライベートにスペイン旅行を体験し、一皮剥け一段とパッショネイトな演奏になったと言われるクリヤ・マコト。2004年にはパリで一流ジャズメンとの共演が行われ、さらに新境地へと一歩踏み出すことが期待される。このようにアルバム「Latin Touch」をレコーディングして以来、クリヤにとってラテンヨーロッパはまさに一つのキーワードとなっている。
01.インサイト:クリヤ・マコト
このアルバムにおけるオリジナル曲のコンセプトは「メロディーは美しく、アレンジはアグレッシブに」だとか。それを最も明確に表しているのが本曲。親しみやすいメロディーだが、テーマ後に控えるアグレッシブなストリングス・アレンジ、それに情感たっぷりのピアノソロが光る。アルバム冒頭を飾るにふさわしい華やかな1曲。
02.ザ・ヴォイジャー:クリヤ・マコト
TBSの番組「ZONE」のエンディングロールで流れていた曲を、今回のアルバム用にリメイクしたのがこの曲。放送時には全国から問い合わせのメールが殺到したという名曲であり、ライブでもこの曲で涙を流すファンが続出。まさにイラク戦争前夜だった制作当時、なんとか戦争が回避できるようにという願いを込めて書かれたという作品。単なる美メロバラードにとどまらない、深い愛を感じさせる感動的な叙事詩に仕上がっている。
03.ジュ・トゥ・ヴ:エリック・サティ
ラテンヨーロッパの作曲家エリック・サティの有名な小曲を、大胆なジャズ・コードでリハーモナイズし、アドリブセクションを儲けている。クリヤのハーモニーセンス、ピアニズムの本領を発揮したソロピアノ作品。
04.センド・ワン・ユア・ラブ:スティーヴィー・ワンダー
スティーヴィーの曲だというのに、まるでパリのカフェにでもいるような気分にさせてくれるストリングス・アレンジが光る。原曲の美しさに触発されたというが、エンディングに向けて盛り上がるリハーモニゼーションとストリングスラインの美しさはまさに圧巻である。
05.ユー・マスト・ビリーブ・イン・スプリング:ミシェル・ルグラン
映画「ロシュフォールの恋人たち」のテーマ曲として知られるミシェル・ルグランの名曲だが、古くから多くのジャズメンに愛されてきたスタンダード・ナンバーでもある。ハーモニーが独特で、聴くには心地よいけれど演奏する側にとってはとんでもなく難しいのだとか。それを日本が誇る名ベーシスト納浩一とのデュオで好演。冒頭のピアノソロが終わりウッドベースのメロディーに引き継ぐ際に、クリヤがローズへ移行するのがまたクールである。
06.ドン・セグンド:クリヤ・マコト
若いアーティストたちに捧げて書いたというアグレッシブなラテン・ジャズ・ナンバー。非常に複雑な、独特のスケール感を持つメロディーを、このテンポでユニゾンプレイするだけでも圧倒されるが、この難題に挑んだのがやはり納浩一。ライブでは参加者全員によってユニゾンされるのが定番化している人気曲。後半部分のファンキーセクションでのエレピソロも聴きもの。この部分は最近のライブでは4ビート・ヴァージョンでプレイされることが多い。そしてドラムの名演はクリヤ自身によるプログラム。「東京JAZZ 2004」では4管ブラスセクションを含む大編成用の新アレンジが披露される予定。
07.世界で一番君が好き?:クリヤ・マコト
平井堅の最新アルバム「LIFE is....」で楽曲提供およびプロデュースした曲の、オリジナル・ライター・カバー。クリヤが常に信頼を置くストリングス・セクション・リーダーの落合徹也をフィーチャーし、ジャンゴ+ステファン・グラッペリ風な2ビートで演奏。テンポはオリジナルよりも少々速め。その後にリリースされた平井堅のアルバム「Ken's Bar」ではクリヤ・マコトが「When You Wish Upon A Star」のプロデュースを担当し、やはり2ビートでアップテンポのアコースティックサウンドを聴かせている。
08.イパネマの娘:クリヤ・マコト
レーベルメイトでもある若きボサノヴァ・シンガーKarenをフィーチャーし、日本人の顔をしたブラジル人小畑和彦およびコモブチキイチロウをゲストに迎えた注目曲。ノーマルなアコースティック・ボサノヴァで始まったと思いきや、途中からコンテンポラリーな打ち込みリズムが現れ、エンディングではヴォーカルの可憐な雰囲気を押しのけpf+gtのかけ合いで盛り上がり見事主役奪還(?)。本人曰く「サンバ・エスパニョーラ」バージョン。このアグレッシブかつオルタナティブなアレンジにウケまくっていた落合徹也氏率いるストリングス・セクションも、難アレンジに果敢に挑み素晴らしい音色を聴かせてくれた。
09.奇跡のスタースクレイパー:クリヤ・マコト
J-R&Bシンガー小原明子のミニアルバム「AK-note」に楽曲提供およびプロデュースした曲の、オリジナル・ライター・カバー。オリジナル・ヴォーカルバージョンは、この冬JR東日本のCMでオンエアされていたもの。自分で弾くエレピのバッキングにピアノのソロを乗せた「ひとりデュオ」の手法は、クリヤにとって初めての経験だったという。
10.アルティメイト・ゾーン:クリヤ・マコト
TBSの番組「ZONE」の挿入曲として昨年末まで放送されていたナンバー。本アルバムの中で最もR&Bテイストを感じさせる作品。このヘヴィーリズムを支えているのがベースの大友正明。クリヤはポップスではこういったスタイルの作品を多く手がけいる。
11.ウェルカム・ホーム:クリヤ・マコト
世界中の人々の平安を願って書きおろしたという、クリヤのオリジナル・ソロピアノ・バラード。スピリチュアルな雰囲気が、祈りにも似た崇高な美しさを奏でている。まさにアルバムの幕を下ろすのにふさわしい名曲。