Makoto Kuriya
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DISCOGRAPHY
ピアノ・トリオの新作は、人気ミュージカルのカヴァー集。ジャズ・スタンダードは元来ミュージカルに題材を求めることが多く、「私のお気に入り」や「虹の彼方へ」などジャズ・ナンバーとして認知されている永遠の名曲が少なくありません。音楽が主役のミュージカルは、ハイライトシーンで奏でられる曲がその真骨頂。当然名曲揃いに違いありません。
しかしかつて無いミュージカル熱が高まる現在、人気ミュージカルの挿入曲をジャズ・スタンダードとして取り上げる風潮は衰えています。その"もったいない"風潮に風穴を開けたのが本作。映画化もして社会現象となった「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」、「マンマ・ミーア」や「ライオンキング」、宝塚でも人気の「エリザベート」など、人気ミュージカルに登場する名曲の数々を、本格的なジャズ・アレンジでお届けします。
マリーン、八代亜紀などの楽曲プロデュースで注目を集めるピアニストのクリヤ・マコトは、毎年ヨーロッパ公演を行い内外で高い評価を得ている名手。加藤登紀子、cobaなどのベテランが信頼を寄せるベーシスト早川哲也と、本邦ジャズ界を代表するドラマー大坂昌彦の名トリオによるリリカルかつ格調高いミュージカル・ジャズは必聴。ミュージカルに興味がない方も、ここに新たなジャズ・スタンダードを発見できる一枚です。
1. 夢やぶれて(レ・ミゼラブル)I Dreamed a Dream〔Les Miserables〕
2. オン・マイ・オウン(レ・ミゼラブル)On My Own〔Les Miserables〕
3. 私だけに(エリザベート)Ich gehor nur mir (I belong to Me)〔Elisabeth〕
4. メモリー(キャッツ)Memory〔CATS〕
5. アイヴ・シーン・イット・オール(ダンサー・イン・ザ・ダーク)I've Seen It All〔Dancer in the Dark〕
6. ロキシー(シカゴ)Roxie〔CICAGO〕
7. 民衆の歌(レ・ミゼラブル)Do You Hear the People Sing?〔Les Miserables〕
8. サークル・オブ・ライフ(ライオンキング)Circle of Life〔The Lion King〕
9. ダンシング・クイーン(マンマ・ミーア!)Dancing Queen〔Mamma Mia!〕
10. ドリームガールズ(ドリームガールズ)Dream Girls〔Dream Girls〕
11. ザ・ポイント・オブ・ノー・リターン(オペラ座の怪人)The Point of No Return〔The Phantom of the Opera〕
12. 美女と野獣(美女と野獣)Beauty and the Beast〔Beauty and the Beast〕
クリヤ・マコト (p/arr)、早川哲也(b)、大坂昌彦(ds)
メーカーさんのご提案をいただいて、思いがけなくピアノトリオの新作をレコーディングすることができた。企画は近年のミュージカル・ナンバーをジャズでカバーしようというもの。このお話しを聞いた時ぼくは膝を打った。だって、ジャズ・スタンダードと言えば最も有名なロジャーズ・アンド・ハートから始まって古いミュージカルの曲ばかり。ところが新しいミュージカルの曲は意外に取り上げられていないからだ。
ミュージカル・ナンバーがジャズ・スタンダードとして残ってきた理由はもちろん、ミュージカルという舞台芸術における主要な要素が音楽だから。ミュージカルは歌で感動させるアートだから作曲に力を入れるのは当然。そして世界中で大ヒットし映画にもなったミュージカルなら、すなわちその中で歌われた音楽が世界中の人々を感動させてきたことを自ずと証明しているわけだ。つまりぶっちゃけて言えば、大ヒットミュージカルの挿入曲は良い曲に決まってるっていうこと。
大ヒットしたミュージカルをジャズの素材にするという風潮が、なぜ近年廃れてしまったのか?音楽の形態が多様化し、ヨーロッパやその他の地域へ広がるに従ってオリジナル曲が重視され、ジャズそのものが一部のマニアックなファンに支えられるニッチな音楽になってきた。その過程で誰にも愛される耳馴染みのメロディーを素材に取り上げる習慣が薄れてきたのかもしれない。だけど今でも古いミュージカル・ナンバーを中心としたスタンダード・ジャズが愛されているということは、新しいミュージカルの挿入曲もスダンダードになり得るポテンシャルがあるはずだ。
そう思って曲を掘り出してみたら、やはり予感は的中。ミュージカルは名曲の宝庫だった。その素材をいかにもジャズの流儀で料理し新たな魅力を発見したい。それがこのアルバムの狙いだった。となればメンバーは、これまでメインストリームのトリオ・ミュージックを共に追求してきたこの二人しかいない。新たな素材との新鮮な邂逅に新鮮な喜びを感じ、音楽の悦びに満ちあふれたぼくらの歌声を是非聴いていただきたい。
(クリヤ・マコト)