Makoto Kuriya

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クリヤ・マコトの猫 その1

東京都杉並区にあるぼくの仕事場は、クリヤ・チビ(♀:写真)の縄張りである。ごくありふれた住宅地にある地下室だが、cat彼女はここに君臨しているのだ。ぼくは時々遠慮がちにそこへ進入していくわけだが、餌をあげたりトイレの砂を交換することと引き替えに滞在を許してもらっているにすぎない。チビは棚やら物陰やらが多いこの部屋を結構気に入っている。
 しかし時々彼女にとって受難の日がやってくる。というのも、ぼくはここでリハーサルをすることがあるのだ。そんな日にはドラムやらベースアンプやらわけのわからない様々な機具が持ち込まれ、怪しげな人物が大勢やってきてぼりぼりスナック菓子など食べながらひどい騒音を出すのでたまったものじゃない。大音響が雷のように轟くのだ。だが侵入者たちはなかなか強そうなので、彼女は物陰に隠れていることしかできない。これは雨も雪も嵐も関係ない家猫のチビにとって、時折降りかかる天災のようなものだ。ところで侵入者たちは、彼女の名前を聞いて一様に吹き出す。拾われてきたときは、確かにチビだったのだが・・・・。-2000年秋 Makoto Kuriya

 

クリヤ・マコトの猫 その2

仕事場周辺は外猫「ハシチャン(♀)」の縄張りである。cat2件先の橋本さんが飼っているらしいのでこの名で呼ばれるようになったが、もちろん橋本さんちでは別の名で呼ばれていることだろう。彼女はパトロールの際必ずぼくの仕事場周辺をひと周りし、ぼくがいれば餌をねだるのが日課である。もちろん我が家の主”チビ”は、彼女がやってくると縄張りを守ろうとして威嚇する。しかし最近チビの態度に変化が現れた。実はこの秋、ぼくが2ヶ月も外スタにカンヅメになっていた最中に、同居猫のニャーコ(♀)が老衰で死んでしまった。そのためチビはこのところ寂しくて仕方がないのだ。だから最近では、ハシチャンが餌をねだりに来るのを密かに楽しみにしているらしい。
 ところでこのハシチャン、チビよりもチビなくせに一児の母である。昨年生まれた近所の強そうな雄猫の子供は、最近見かけないところを見ると、すでにハシチャンの縄張りから追い出されたようだ。というのも、彼女最近また妊娠しているらしいのだ。そしてリハーサルで大騒ぎしている最中にも、1日に何度も餌をねだりに来るのである。うーん、妊婦は良く食う。(写真は子供の頃のチビ。)-2000年冬 Makoto Kuriya