Makoto Kuriya
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COLUMN
ジャズメン小話 その1
アメリカの話。あるところにジョーイ・カルダラッツォという超ゴキゲンなピアニストがいた。ある時ジョーイの所に一人のサックス奏者から連絡が入り、仕事に誘われた。そこでジョーイはそのサックス奏者が指定したジャズ・クラブへ出かけ、セッションをした。そのサックス奏者はかなり上手いプレイヤーで、ジョーイはすっかり彼を気に入ってしまった。そこで誘ってくれたお礼にと思い、今度は彼の方からそのサックス奏者をギグに誘った。
さて誘われたサックス奏者がジョーイに指定された場所に行くと、そこはホテルのレストランだった。彼はセッションに呼ばれたものとばかり思っていたのでビックリした。というのもそのサックス奏者は超一流のプレイヤーだったため、レストランなどの営業の仕事は普通やらないのだ。しかしどうやらジョーイ自身は仕事ではなく軽いセッションのつもりみたいなので、サックス奏者は「まあいいか」と思い快く一緒に演奏したのだった。
そのサックス奏者の名はマイケル・ブレッカー。なんとジョーイはマイケルのことを知らなかったのである(^_^;)(^_^;)。これがホントの話なら、ジョーイもマイケルもいいかげん大物である。さすが大国アメリカ、どんな人間でもいるものだ。
そもそもアメリカという国は、いろんな人種のいろんな人がいろんな場所で勝手に音楽をやっている。中には部屋の中で日長一日延々練習ばかりしていて、全然世の中に出てこない人もいっぱいいる。そんな人がある日ポコッと人前に出てきて突然スターになったりする。だからおもしろいんだよね。かのビル・エヴァンスだって「クローゼットに閉じこもって練習ばかりしていたら、ある日突然ドアを叩く人が現れた」なんて言ってるくらいだ。
逆に素晴らしい才能を持っているのに、表舞台に出てこない人も山ほどいる。昔よく共演したデリバート・フェリクスというベーシストは、テクニックもフィールもご機嫌で、一時期はウィントン・マルサリスのグループでプレイしていた。ところがNYのジャズシーンは合わないといって、ある日突然田舎へ閉じこもってしまった。そんなミュージシャンがその辺にゴロゴロしている、それがアメリカだ。どんなユニークな人間も、変人と言えるくらい個性的な人も、存在を認められて自由に生きている。そんな土壌だからこそ、突然新しい音楽や新しい文化が生まれてくる。
(注:ちなみに上記カルダラッツォとブレッカーの話は又聞きで、実話かどうか定かではありません。オソマツ。)
ジャズメン小話 その2
PAエンジニアのK氏は、あるときお坊さんが100名集まって読経するというコンサートで仕事をしたそうだ。普段あまりない試みなので、音響もなかなか大がかりになり大変だ。何しろ人数が多いので、モニターを調整するだけでも大騒ぎである。それだけにやりがいもあるというものだ。
さてリハーサルの時、気合いを入れて飛び回っていたところBOSE(ボーズという音響メーカー)のモニター・スピーカーが1台オシャカになって音が出ていないことを発見した。そこで「コレはいかん!」と思ったK氏、スタッフに向かって大声で一言。「オーイ、ここに転がってるボーズ死んでるゾ!!!」するとその瞬間、会場中の坊主(100名)が一斉に彼を見たそうである(^_^;)・・・。(ちなみに業界では、モニター・スピーカーのことを通称「転がし」っていうんだよね、ハハハハ。)