DISCOGRAPHY

Self works
Album

X-BAR TRIO
 

きわめてコンテンポラリーな冒頭の「Survival Instinct」が衝撃を与えた、クリヤ・マコト初のピアノ・トリオ・アルバム。在米時代の盟友ジェームズ・ジナスと、同時期に帰国した注目の若手ドラマー大坂昌彦を迎え、録音賞も受賞た佳作。
1992年にオリジナル初回プレスがリリース。その後1997年に再発盤初回プレスがリリースされた。

tracklist
01.Survival Instinct
02.In And Outs
03.Harvest Road
04.Justice
05.Love And Dedications
06.Here Comes The Bad Boy
07.Moon Dog
08.X-Bar Fantasy

musicians
クリヤ・マコト(pf) ジェームズ・ジナス(b) 大坂昌彦(ds)

スイングジャーナル 7月号
試聴用テープをセットするなり飛び出してきた1曲目にまずドギモを抜かれた。 この瞬発力と疾走感の凄まじさ。いきなりのカウンター・パンチを食らったような衝撃が走った。昨年「ボルチモア・シンジケート」をひっさげ、忽然と姿を現 したクリヤ・マコト。ピアニストとしての力量もさることながら、言語学を修め たというプロフィールを物語る知的な作曲センスを強く印象づけられたのだった。 つまり生来の身体感覚から自然と湧き出るビートや歌心の持ち主というよりもむしろ、高度な学習能力によってジャズの語法を習得した、秀才肌のプレイヤーだ と思うのだ。「ボルチモア~」では、共演者のキャラクターも作用してか、ウィ ントン・マルサリス以降の米国若手主流派に近いサウンドが、全体のカラーを決定づけていたが、今回は基本形のピアノ・トリオで、より一層ソリッドなアプローチを展開する。前述の通り(1)はM-BASEの新作か?と疑いたくなる曲想。しかしこのスピード感は極めて堅固な曲構造ゆえに、決して無軌道なものではなく、構成美すらそこに漂わせている。そしてドラムスの大坂。ここでのプレイはちょっ とハンパじゃない。大坂だからこそこの曲が生きたのだと痛感させられる。曲はすべてクリヤの自作だが、メロディーそのものよりもアドリブに比重があると聴 いた。ともかく、もはや"日本人"という形容詞に特別な意味が成立しないことをアピールする強力盤だ。(杉田宏樹)

ブルータス 277号
前作「ザ・ボルチモア・シンジケート」で注目のデビューを果たしたクリヤの、 これが2枚目のアルバムだ。スリリングでスピード感のある演奏は今回も衰えていない。ベースにジェームズ・ジーナス、ドラムスに大坂昌彦を迎え、クリヤのパワーと切れ味の鋭いピアノの交錯はとても刺激的にきこえるのである。

FM-FAN 6/8-6/21号
昨年「ザ・ボルチモア・シンジゲート」で、突然すい星のように登場したピアノ のクリヤ・マコトの待望の第2作だ。クリヤは、現在X-BARユニットというユニークなグループを率いて、日本で活動しているが、これはそのトリオ・バージョ ン。クリヤのジャズが驚きなのは、スタイル的には正統波的なジャズにもかかわ らず、その構造が全く斬新でこれまでの慣習にとらわれていないことである。 かといって、安易に新しさを主張するわけでもなく、ジャズが伝えるその本質を はずさないというか、むしろそこに頑固にこだわる姿勢がたくましくさわやかだ。この演奏もピアノ・トリオ・ジャズに徹底するその気概のようなものに圧倒される。日本のジャズの確かなニューウェイブ。(青木和富)

ジャズライフ 7月号
精力的に活動を再開したクリヤ・マコトの新作は、トリオ・ジャズへのチャレンジだ。ピュア・ジャズにガップリ四つに組んだシリアスなアルバムなので、とても紹介に苦労してしまいそうなんだけど、正直なところなんでまあこんな難しいトコロから始めるんだろうという感想を持っている。「難しい」というのはコムズカシイ音楽という意味ではなく、難しいスタンス、あるいはポジションを彼が (あえて)とったことに対する表現なのだ。シンプルかつスタンダードな編成であるピアノ・トリオは、一目瞭然であるがゆえに難しい。釣りで言われるところの「へら鮒に始まりへら鮒に終わる」という趣があるんじゃないだろか。親しみやすさを主眼としたトリオ編成という見方はこの場合当てはまらない。リリカルでもムーディでもない彼のピアノのテイストは、(それが彼のオリジナル曲にマ ッチするのだが)たぶんBGMの枠に入れられるものではない。厳然とひとつの空 間を作り上げ、その幻想の中に聴く者をひきずりこむ。密度の高いひとつひとつ の音が重なり合って生み出すうねりが、精神を高揚させてしまうのだから。新生ブレッカー・ブラザースに参加するジェイムズ・ジーナスのベース、すでに寸分の隙も見せぬコンビネーションで迫る大坂昌彦のドラムとも、実に太くて気持ちがいい。この「太さ」のイメージはそのままクリヤのサウンドの「太さ」につな がる。最小コンボの独立した音を、一本の強靱な綱に結い上げるパワーと集中力があふれる。基本を問うたクリヤ・マコトが、どう次のジャズの基本を創ってゆくか。楽しみだ。(富澤英一)

ポパイ 7/8号
デビュー作「ボルチモア・シンジケート」でデビューしたクリヤのこれが2枚目。 複雑なリズムと切れそうなパワーが交錯するクリヤのジャズは日本のシーンを大いに刺激するだろう。これは必聴です。

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