DISCOGRAPHY

Self works
Album

NOTHIN' BUT JAZZ

世代を超え、国境を越え、スタイルにもこだわらず、ジャズの魅力をめいっぱいに楽しもう!を合言葉にミュージシャンたちがクリヤのもとに集結したクリヤ・マコト・オールスターズ。ジャズの楽しさが詰まったびっくり箱のようなアルバムが完成しました。

tracklist
01. Street Walking Woman (feat. Geila Zilkha)
02. Afro Feet
03. Great American Melodies (feat. Naruyoshi Kikuchi)
04. Cherokee Introduction
05. Cherokee
06. The Stranger (feat. SHANTI)
07. MANTECA
08. Sakura Garden
09. On The Ridge
10. Interlude (アドリブコンテスト課題曲)
11. Sister Sadie
12. Discovery

musicians
クリヤ・マコト (p/key/arr)、ギラ・ジルカ(vo)、SHANTI(vo)、kubota(g)from JiLL-Decoy association、菊地成孔(sax)、 タブゾンビ(tp)、元晴(sax)from SOIL &"PIMP"SESSIONS、北原雅彦(tb)from Tokyo Ska Paradise Orchestra、スノーボーイ(perc)、松岡"matzz" 高廣(perc)from QUASIMODE、鳥越啓介(b)、早川哲也(b)、納浩一(b)、大坂昌彦(ds)、則竹裕之(ds)、天倉正敬(ds)、太田剣(sax)、グラハム・パイク(tp)、中川英二郎(tb)、類家心平(tp)、安井源之新(perc)、ジェームス・ホアレ(narr)、フランチェスコ・ブルーノ(g)

皆さん、お待ちかね。クリヤ・マコトの最新作の登場だ!実に格好いいご機嫌なサウンドが詰まっている。さて本作は、1991年のデビュー作『ザ・ボルティモア・シンジケート』以来通算17作目に当たる作品。ここ数年のクリヤ・マコトの作品は1枚1枚に独自性があり、いずれも優れた内容で、すべてにおいて彼が充実した状態にあることを物語っている。デビュー20周年記念盤『アート・フォー・ライフ』は、総勢28名が参加した夢のセッション集。『新世紀スタンダード』は、アニソン集。『Favorite Music Jazz/夢やぶれて』は、ミュージカル集。『ジャスト・ミュージック』は、日欧米混合ユニットによる本格ジャズだった。本作には、クリヤの3つのユニットに新旧の実力派のゲストが参加し、多彩なクリヤの魅力が味わえる。クリヤ・マコトこそ、ジャズの過去と未来を繋ぐ存在と確信する。
ここでクリヤの人生を少し振り返ってみたい。彼は兵庫県の神戸で生まれた。ピアノを5歳から始めた。またスチール・ギターを演っていた父親からウクレレを習い、ギターも自然に弾けるようになった。小学1~2年のころ、クリヤはいつも一緒にいる二人の仲良しがいた。やがてひとりは「獣医」となり、もう一人は「ダチョウ倶楽部」というお笑いグループの人気芸人、「上島竜兵」(本名は龍平という)となった。意外なことに、当時の上島はクラス一おとなしい少年だった。卒業文集には、上島もクリヤも載っている。父親の仕事の都合で、クリヤは小学5年のとき、横浜に引っ越し、次いで千葉に引っ越した。中学時代は、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルなどを演奏するロック・バンド。高校時代は、キングクリムゾン、イエス、リー・リトナー、チック・コリア、ハービー・ハンコックのヘッドハンターズなどロックとフュージョンを演奏するバンドをやっていた。

大学は、米国のウェストバージニア州立大学 言語学部に進んだ。そこは楽園のように美しい田舎町だった。ここでクリヤは町一番のベーシスト、ケヴィン・フライソンの親友となり、やがて黒人コミュニティーの仲間たちと親しくなる。そしてアメリカで脈々と受け継がれるブルース、ジャズの神髄を学んだ。ケヴィンは、"I eat jazz"と言っていた。彼らはパンだけでなく、ジャズを食べて生きていた。ジャズは身体を保つ重要なものなのだ。クリヤはジャズの巨人たちのコピーでなく、真の音楽の意味と演奏が人々に与える価値(力)を知ったのだ。元々実力のあったクリヤはその力を認められ、当時新世代のホープとして注目されていたゲイリー・トーマス、スティーブ・ウィルソンなどの仲間たちとなった。彼らは、"M-BASE派"と呼ばれ、彼らと録音したのがクリヤ・マコトのデビュー作『ザ・ボルティモア・シンジケート』だったのである。帰国後のクリヤは、日本ジャズ維新の重要アーティストとなり、瞬く間に日本の音楽シーンに必要な人となった。彼の実力を示すエピソードがある。1996年、六本木のタトゥー東京で演奏していたら、ハービー・ハンコックが客で来ていた。終演後、ハービーに「オリジナリティがあって素晴らしいプレイだった」と絶賛された。2年後、"リターン・オブ・ザ・ヘッドハンターズ"のツアーで来日時、クリヤはハービーに真っ先に楽屋に呼ばれた。2004年に「東京JAZZ」に出演した際、クリヤは遂にハービーと共演した。ハービーは「マコトが日本一のピアニスト」と語る。クリヤは超一級の即興演奏者であり、ジャズに限らず様々なジャンルを簡単に行き来する。作曲やアレンジ更には映画やTVの音楽も手掛ける。正にハービーと同じ生き方を実践している。

さあアルバムを聴いてみよう。ここではクリヤの3つのユニットが核となっている。 ユニットA(①曲目、④⑤⑧⑫)=クリヤ(p)納浩一(b)則竹裕之(ds)または大坂昌彦(ds)。 ユニットB(②⑨⑪)=クリヤ(p)早川哲也(b)大坂昌彦(ds)。 ユニットC(③⑦)=クリヤ(p)鳥越啓介(b)天倉正敬(ds)安井源之新(perc)。

①はマリーナ・ショウの傑作『フー・イズ・ジス・ビッチ・エニウェイ』の人気曲。いきなりクリヤのエレピが格好いい。ギラ・ジルカ(イスラエル人と日本人のハーフ、「Fly me to The Moon」を歌った全日空のCMは「誰が歌っているの?」と大きな話題になった)の声がマリーナ・ショウに勝るとも劣らず素晴らしい!②はニューヨークのタップダンサーとのコラボレーションで作った曲。黒人のダンサーの方にちなんで名付けられた。Soilの元晴(as)タブゾンビ(tp)北原(tb)クリヤと白熱のソロが投入される。まるでライブのようだ。③は人気のドラマなどがメドレーになっている。順に"シンプソンズ""ロッキー""ラプソディー・イン・ブルー""美女と野獣""シンプソンズ"。"ロッキー"の前後には"ツァラトゥストラはかく語りき"が挿入されている。④~⑤はレイ・ノーブルが書いたスタンダード。パーカーやブラウンの演奏が有名。ソロ・ピアノから始まり、トリオが猛スピードで疾走する。⑥は1977年のビリー・ジョエルの大ヒット曲(1000万枚売れた)。ここではSHANTIがナチュラルで自然な美声で魅了する。⑦はディジー・ガレスピーが書いたアフロ・キューバンの名曲。4ビートにチェンジしたり、戻ったりと楽しい。⑧は映画『富岳百景』のために書いた曲。切なくはかないメロディに泣けてくる。納浩一のベース・ソロとクリヤのピアノが素晴らしい。⑨はBS日テレ『TOUGE』のテーマ曲。峠をスポーツ・カーで走り抜けるようなイメージが漂う。類家(tp)太田(as)中川(tb)クリヤ(p)のソロが物凄い。⑩はアドリブ・コンテスト用のリズムトラック(③)である。⑪は、ホレス・シルバーの名曲。ライブ感満載の演奏。⑫はBS-TBS『それがしりたい』のテーマ曲。地方を取材し日本を再発見する番組だ。パット・メセニーを彷彿とさせるブラジアン・テイストが実に格好いい。フランチェスコ・ブルーノ(g)とクリヤの才能が爆発する。 最後に朗報がある。今回の作品では、菊地成孔と共催で、アドリブ・コンテスト第2弾を行う。前回からはボーカリスト、KOTESTUが誕生した。次代を牽引する才能の持ち主たちよ。名乗りを上げて欲しい!

(高木信哉)

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