DISCOGRAPHY

Self works
Album

Art for Life
 

米国で活動していたクリヤ・マコトが、アメリカと日本でのアルバムデビューを果たしてから20年。帰国後に出会った素晴らしいアーティストたちを迎え、ジャズという音楽の多様性と、高い音楽性に基づいた「クリヤ・マコトのジャズ」を堪能できるアルバムが完成。
自身が率いる3ユニットのメンバー全員が参加し、さらに超豪華フロント・ゲストが競演。クリヤを含め、総勢28名による夢のオールスター・セッション作品。

tracklist
01. Earth
02. Crossover
03. Speak Low (ピアノデュオ)
04. Art for Life
05. One and Only
06. 酒とバラの日々
07. Film Man
08. Step Ahead
09. Vacance
10. Shadow Form
11. Interlude
12. Iron Hands
13. Quiet Afternoon(Watch What Happens~ジェット機のサンバSolo Piano)

musicians
クリヤ・マコト (p/key/arr)
01.中川英二郎(tb)、エリック宮城(tp)、早川哲也(b)、大坂昌彦(ds)
02.SHIHO(vo)、コモブチキイチロウ(b)、村上広樹(ds)、安井源之新(perc)
04.熊谷和徳(tap)、鳥越啓介(b)、天倉正敬(ds)
05.伊東たけし(as)、早川哲也(b)、則竹裕之(ds)、萱谷亮一(perc)
06.feat. akiko(vo)
07.太田剣(as)、納浩一(b)、大坂昌彦(ds)
08. NAOTO(vn)、コモブチキイチロウ(b)、大槻“kalta”英宣(ds)
09.小沼ようすけ(gt)、塩田哲嗣(b)、勘座光(ds) 、安井源之新(perc)
10.三村奈々恵(mar)、上田裕香(vo)、佐藤“ハチ”恭彦(b)
12. 上妻宏光(三味線)、櫻井哲夫(b)、則竹裕之(ds)

JAZZ JAPAN 4月号
ワールドワイドな活動を展開して現代日本のジャズを牽引するピアニスト、ソングライター、プロデューサーにして近年は映画音楽監督としても活躍するクリヤ・マコト。米国での足跡を含め通算30年のキャリアを誇る彼の日本デビュー20周年記念作だ。クリヤ・マコト・トリオ、ハイブリッドなラテン・ジャズを標榜する話題のプロジェクト、RHYTHMATRIX、そして、昨年はエジプトのフェスでも大成功を収めたTOKYO FREEDOM SOULでクリヤと活動を共にする面々は勿論、Fried PrideのSHIHOにakiko、ボサノヴァ系新進シンガー上田裕香、伊東たけしに太田剣、小沼ようすけに話題のヴァイオリニスト・NAOTO、クラシック畑のマリンバ奏者、三村奈々恵に津軽三味線の名手、上妻宏光、更には気鋭のタップダンサー、熊谷和徳など、多彩にして各々が際立った個性を放つゲスト達の顔ぶれはクリヤが日本で培ってきた強力なアーティスト人脈を物語るが、それぞれの魅力を熟知したクリヤならではの傑作曲だらけ。世界に向けても堂々"J-ジャズ・Now"の魅力をアピールし得る傑作だ。(尾臺順子)

JAZZ LIFE 4月号
ジャズ・ピアニストや作・編曲家としてだけでなく、エヴァンゲリオンの制作に携わるなどジャンルを超えた活動でも知られるクリヤの新作は、デビュー20周年の記念アルバム。大坂昌彦や納浩一をはじめとする邦人の共演ミュージシャンを多数、ゲストに迎えたことからも伺えるが、キャリアの集大成と呼ぶにふさわしい豪華な内容だ。作品のベースになっているのは、2006年から2008年にかけ日産車ムラーノのHP上で展開されたメディア・ミックスの実験的な取り組み。音楽を担当するクリヤが、HP更新ごとにゲストを迎えて新曲を披露するもので、かねてより熱心なファンの間では楽曲のカッコ良さが話題になっていた。トロンボーンとトランペットがフロントを務めるファンク・チューン①、ソウルフルなスキャットがオシャレなラテン・ナンバー②など佳作が並ぶが、「ムラーノ・セッション」ならではと思われるのは何と言ってもタップ・ダンサー熊谷和徳とのコラボであるアルバム表題曲④。小気味よいタップのリズムが上質なパーカッションの役割を果たす印象的なナンバーだ。ほかにも伊東たけしをフィーチャーした⑤あり、櫻井哲夫に則竹裕之というフュージョン界の腕利きに三味線の上妻宏光がからむ⑫など、とにかく聴き所満載。クリヤのジャンルを超えた音楽性が凝縮された中身の濃い作品なのだ。(阿部好宏)

CDジャーナル 4月号
米国でのプロ経験をバネに、新たな発想で日本のジャズに風穴を開ける異色のピアニスト、日本デビュー20周年記念作品。さまざまなプロジェクトで出会った才能豊かなアーティストに呼びかけ、今を生きる日本人の矜恃が滲み出るスリリングでエキサイティングなジャズ・セッションを展開。日本を代表するジャズマンはもとより、タップダンサーの熊谷和徳、金髪バイオリニストNAOTO、三味線の上妻宏光をはじめとするユニークな逸材が駆けつけ、多様な個性が織りなすインスパイアリングなコラボレーションで酔わせる。(工藤由美)

Liner notes by クリヤ・マコト
1.Earth/feat. 中川英二郎(tb)&エリック宮城(tp)
 冒頭を飾るジャズナンバーは、文句なしに日本のジャズ界が誇れる2ホーンをフィーチャーした。タイトルの通りアーシ-に唸るトロンボーン、驚異的なハイ ノートで吠えるトランペットの音色が爽快だ。リズムセクションはベースに早川哲也、ドラムに大坂昌彦。これはぼくのメインストリーム・ユニット、「クリ ヤ・マコト・ピアノ・トリオ」のメンバーである。ハードバップから新主流派に至るジャズ全盛期のフィーリングが身体に染みついた彼らとは、ぼくら以前のプ レイヤーとも、ぼくら以降のプレイヤーとも違う、語らずともわかり合えるツーカーな部分があり、いつでも安心して極上のジャズを分かち合える。

2.Crossover/feat. SHIHO(vo, from Fried Pride)
 リズムセクションはぼく、安井源之新(perc)、コモブチキイチロウ(b)、村上広樹(ds) の4人で、これは2009年ファーストアルバムをリリースした「RHYTHMATRIX」のメンバーだ。ブラジル音楽に造詣の深い安井・コモブチ両氏を迎 えたラテンジャズ・ユニットだが、ブラジルから世界的に広まったボサノヴァやダンス音楽を単に模倣するのじゃなく、日本人らしさを前面に出してハイブリッ ドしたラテンジャズをめざした。ちなみにこのユニットでは2008年に「台中ジャズフェスティバル」に出演し、熱狂的なアンコールを受けた。そのコンセプ トを踏襲した、その名も「Crossover」。ソウルフルなSHIHOのスキャットは、ひときわ肉感的で魅力的。人生の多様多彩な活動と、その喜びを見 事に表現してくれた。

3.Speak Low
 以前から構想を練っていた「一人デュオ」を、大好きなスタンダードナンバーで実践してみた。ぼくは元々「ソロ」タイプのアーティストではなく、根っから のアンサンブル型人間だ。映像音楽などは作品との対話から、セッションなら共演アーティストとの相対関係によって、自分の音や発想が生まれてくるタイプ。 まったく別の個性とのぶつかり合いももちろんエキサイティングだけど、コンセプトに誤解の生じる余地がない自分とのセッションでは、やはり思いが凝縮して いくような気がする。

4.Art for Life/feat. 熊谷和徳(tap)
 人生のためのアート、人々のためのアート、ぼくがアルバム・デビュー以来アーティスト活動をする上で、常に意識してきたポリシーだ。この曲では、体中か らパッションがほとばしり、その存在そのものがアートのような男、熊谷和徳(タップダンサー)をフィーチャーした。リズムセクションを務めるのはベースに 鳥越啓介、ドラムに天倉正敬。ぼくら3人は現在、「TOKYO FREEDOM SOUL」というユニットで活動中だ。このユニットはその名の通り、自由奔放なアートとサブカルチャーを融合し、他にはない、極めて日本人らしい”東京発 のジャズ”を志向している。2010年にはこのトリオでエジプトの「カイロ・ジャズフェスティバル」に出演し、熱いスタンディング・オベーションを受け た。決して言い残すことのない、果てるまで全速力で走り続ける4人の男の共演である。

5.One and Only/feat. 伊東たけし(as)
 この曲を聴けば、伊東たけしがいかに潔いジャズメンだったか!と驚く方も多いだろう。まさに唯一無二、孤高のカッコ良さである。周知の通り彼はT- SQUAREのアルト・サックス・プレイヤーだが、ぼくはかつて、彼のソロ・アルバム2枚をプロデュースさせてもらった。その時はクラブ・テイストの作品 に挑んだが、今回はまったくの別世界。あえてジャンル分けするなら、スピリチュアル・ジャズとも言える作品だ。ぼくはかつてグローヴァー・ワシントン Jr.がプレイするメインストリーム・ジャズに唸った経験があるが、音楽への理解が深いアーティストはジャンルを超えるのだ。ベース=早川哲也、ドラム= 則竹裕之、パーカッション=萱谷亮一という安定感抜群のメンバー。ラストのドラムソロまで、めいっぱいテンションが漲る。

6.酒とバラの日々/feat. akiko(vo)
 ハイテンションの曲が続くので、ほっと一息つきたいと思ってこの美しいスタンダードナンバーを取り上げた。この名曲にオーガニックなリハーモナイズを施 すと、この雰囲気に違和感のないスモーキーな歌声が欲しくなった。まさに、これ以上のキャスティングはあり得ないと思う。この録音のために書き下ろした間 奏のムーブメントに合わせ、アンニュイにささやくスキャットもなめらか。甘い私小説のような、akikoならではの世界観を生み出してくれた。

7.Film Man/feat. 太田剣(as)
 自分で作っておいて言うのも何だが、我ながら変わったナンバーだ。リズムセクションはベースに納浩一、ドラムに大坂昌彦という、ぼくが帰国当初から世話 になりっぱなしの名手二人。その名手たちですら、初めて譜面を見て合わせた時にはまったく”理解不能”という顔をしていた。グルーヴの異なる2種類のリズ ムを行き来するため、その変わり目で譜面には書けない「微妙な空間」が生じる。慣れると、この瞬間がたまらなく心地よかったりもする。実は発想の元になっ たのは、とあるエッセイだった。楽しい瞬間をカメラに収めたまま、決して現像しない男。現像すると幸福が壊れてしまうような気がするからだ。恋が破れ、 すっかり過去のものとなった時にやっとその写真を眺めてみる。現実と思い出を行きつ戻りつする男の、人間的なユーモアとペーソスを表現するために、極めて 日本人らしい、リアルなサックスを奏でる太田剣をフィーチャー。この曲の主役は、彼以外思いつかない。

8.Step Ahead/feat. NAOTO(vn)
 ジャズファンにはもしかしたらなじみが薄いかもしれないが、インスト音楽ファンの間で人気沸騰中の金髪バイオリニストNAOTO。こんなルックスだがた だのアイドルではなく、芸大出のスーパー・テクニシャンである。まだ学生時代の彼と、ストリングス・セクションの一員として出会った。それ以来、ぼくがプ ロデュースを手がけた作品のストリングスに、数多く参加してくれている。2005年にソロ・デビューしてからは一躍スターになり、デビュー5周年記念アル バムにはぼくも参加させてもらった。彼のテクニックと持ち味を生かすべく、曲はアグレッシブかつプログレッシブなスピード感を重視。ベースにはオールマイ ティーなコモブチキイチロウ、ドラムには華やかなプレイが独特の大槻英宣を起用。ひときわ派手な1曲に仕上がった。

9.Vacance/feat. 小沼ようすけ(gt)
 ぼくが思い描く”粋なジャズギター”のイメージを、バッチリ表現してくれた小沼ようすけ。澄んだギターの音色が心地よく、是非ドライブのお供にして欲し い一曲だ。ドラムにはロサンゼルスから帰国したばかりの若手、勘座光を起用。そしてベースにはニューヨークで活動後、現在はバークリー音楽院で音楽エンジ ニアリングを習得中の塩田哲嗣を、来日中にすかさず捉まえてレコーディング。いつもハイパーな彼のおかげで、単なるイージーリスニングではない骨太なグ ルーヴ・ジャズに仕上げることができた。時折宙を飛び交う「飛び道具」を操るのは、パーカッションの安井源之新。人生にはバカンスが必要だ。

10.Shadow Form/feat. 三村奈々恵(mar)
 全然ジャズメンではない、クラシック・プレイヤーの三村奈々恵をフィーチャーしたこの曲は、彼女のイメージを覆す作品に仕上がっているかもしれない。だ けどマリンバはパーカッションであり、彼女はマリンバの生まれ故郷であるコロンビアのエスニック・アーティストともコラボレーションをしているから、全く 違和感が無いことはわかっていた。クラブ仕様の打ち込みでベーシックリズムを構築し、ベースに佐藤“ハチ”恭彦を起用。彼は生粋のアップライトベース・プ レイヤーだが、実はエレベのグルーヴも素晴らしい。そして、最近日本のブラジル音楽ファンの間で話題になっているスキャットの上田裕香は、ぼくのユニット RHYTHMATRIXにもたびたび参加している要注目ボーカリスト。

11.Interlude
 トラックダウンの最中に突如思いついたインタールードは、「One and Only」の心地よいグルーヴを抜き出したもの。せっかくなのでこのグルーヴに合わせ、ソロをプレイするアドリブ・コンテストをやることにした。模範演奏はもちろん伊東たけしを聴いて欲しい。

12.Iron Hands/feat. 上妻宏光(三味線)
 豪華すぎるこのメンバー。リズムセクションはベースに櫻井哲夫、ドラムに則竹裕之というフュージョン・シーンの重鎮二人。フロントの上妻宏光は、日本の 伝統楽器津軽三味線の名手であり、様々なコラボレーションや異ジャンル音楽とのセッションもこなす、モダン三味線の草分け的存在だ。彼とは結構長いつきあ いで、ぼくが音楽監督を務めたアニメ作品でフィーチャーさせてもらったこともあるし、一緒にオーストラリア・ツアーもやった。この3人がどんなに凄いかを 証明したくて、ひねり出した曲は7拍子のプログレッシブなナンバー。トンガったキレのあるリズム、圧倒的な技術、それでいて「和」である。「Iron Hands」というタイトルが示すとおり、手数自慢のテクニシャンが結集したこの曲は、「Step Ahead」と並んで”男の華”を感じさせるアグレッシブな1曲に仕上がった。

13.Quiet Afternoon(Watch What Happens~ジェット機のサンバ)
 アルバムのラストに、敬愛するビル・エヴァンスを偲んで彼の時代のようなサウンドのソロピアノを奏でた。加えてミシェル・ルグラン、アントニオ・カルロ ス・ジョビムという大好きな作曲家たちへの思慕も託した、トリプル・トリビュートである。静かな午後にピアノと語らい、偉大な先人たちに思いを馳せる。こ れがぼくにとっての原風景である。

(クリヤ・マコト)

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